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危機管理で最も大切なことって何?<中編>

更新日:2023年11月3日



危機管理 広報 クライシスマネジメント

前編はこちらから


不穏な空気漂うお歴々が揃った会議室で伺った話をもとに、私がもう一度事実関係を繰り返すことから業務開始です。


そう、バラバラの食材を調理して、まずは一皿お出しする感じでしょうか。


ただし、長年の経験で培った勘を頼りに、時系列を並び替え、勝手に主語や数値を挿入し、別の視点から客観的に評価を加えます。


時には、一番の肝となるポイントをわざと間違えて反論を引き出しておくといった高等テクニックも使ったりします。


すると、その前のセッションで黙りこくっていたお歴々の皆さんが、水を得た魚のように熱く口を挟んでくれます。



「いや、それは1週間前の話です」


「まだ現場しか知らない」


「それは、まだ仮の予想で未確認の数字だ」



時には「このコンサルタントほんとに大丈夫か?」と睨まれることもしばしばあります。端から見るとまるでコントのように見えるでしょうが、私も含め、全員真剣なギリシャ悲劇の演者です(笑)


度々修正や訂正を繰り返し、ようやく先ほどのご担当者が話されたものとは似て非なる、これまでで一番真実に近いストーリが出来上がります。


それは、先ほどまでのお話とFACTや内容が少しずつ異なり、結果、大幅にリスク評価の見直しが必要となる事態の全貌が明らかとなります。ここまでで、約3時間が軽く経過してます。


クライシスマネジメントの要諦の一つはその対応スピードにありますが、時間という観点からはこのプロセスは全く無駄です。(実は本当は全く無駄ではなく、後々このセッションが効いてくるような仕掛けをいつもしているのですが、そのお話はまた別の機会のお楽しみに!)


いや、実際には3時間の無駄では済まされません。危機管理対応には多くの関係者やステークホルダーが集います。社内の他専門部署や外部専門家、弁護士、監査法人、株主時には警察や監督官庁――。


その初動報告の為に、いつか報告書やリリースを作らなければなりません。また、クライシスは生き物で、事態や状況、重篤性が時間単位で急変して行くので、リスク収束まではずっとその更新作業に追われます。


初期の基本ファクト情報がしっかり書き出されていなければ、口頭での曖昧な記憶のアップデートを重ねることになります。


ここまでお話して、口頭なんて嘘でしょ?と思われてる方!


実は、私も当初駆け出しのころその思いでした。しかし、繰り返しとなりますが、名だたる重厚長大企業や機動力に優れた急成長IT企業のほとんどが、危機管理で最も大切なこと=イロハのイがなぜか出来ないのです。


私が敬愛する、普段は聡明で優秀なタレント揃いの広報、法務、総務部長の方々やコンプライアンス部やリスクマネジメント委員会の皆さん。ここまでの業績を成し遂げた歴戦の強者の取締役陣。間違いなく日本経済の最精鋭集団が何故に?ですよね。


その原因は大きく分けて二つあります。


 

危機管理 広報 クライシスマネジメント

① 心理的要因

どんなに優秀な頭脳でも、パニック時の情報処理能力(摂取力、理解力、判断力、決断力)は平常時の20%に低下すると言われています。


来るべき事態の重篤性をある程度予測できるほど優秀だからこそ、余計慌てて不安に苛まれまる。一刻も早く悲劇を専門家に吐き出して心配を解消したい、胸の閊えを楽にしたいという原始的本能に平常心を無くしてしまわれる。


② 経験不足

当り前ですが、重篤な不祥事や大事件の経験は皆さん稀か皆無です。だからこそエクセレントカンパニーとしての今日があるのです。逆にそんな経験が豊富な企業であれば潰れてるか、とっくに名前が変わってますね。


従って、リアルのノウハウが欠如しており、型式で作った危機管理時の体制やシュミレーションなどが全く役に立たない機能しない。突然に有事の絶対失敗できない局面に追い込まれて、平時の基本行動に手が回らない。迫りくるタイムラインに時間も足りずといったところでしょうか。


つまり、危機管理とは、失敗経験が少ないエリート集団への陥穽の罠とも呼べます。当り前ですがクライシスは現場で起きます。そして、多くの複雑な要因が絡み、多くの関係者が多くの情報を一斉に発信し本部へ送り付けてきます。


そして、その大量の情報を冷静に分析し、解決に向けハンドリングするのは前述の管理部門や経営陣の皆さんです。ある面、本当の当事者ではない。だからこそ、一刻も早く情報を収集・処理し、今のFACTとして客観的にまとめて速やかな一次評価をしなければなりません。


そのために何をしなければならないのか――。


何も難しいことはありません!その答えは、たった5つの情報項目にあります。

この5つの情報項目とはいったい何か?次週の記事でまとめてご紹介します。



<次回に続く・・・>

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