若者進化論~Z世代を迎え入れる企業が知っておくべきポイント~
- fixers-inc
- 2022年1月18日
- 読了時間: 7分
更新日:2023年11月3日

あけましておめでとうございます。
新年早々、あまりにも急激なコロナ感染拡大に驚きつつも、本コラムを愛読してくださっている皆様の健やかなる一年を心よりお祈りしております。
さて、年明け最初のテーマは、Z世代(25歳以下の若者世代)における、これまでの常識が全く通用しない、脅威のコミュニケーション様式の変化についてです。
まずは、最近こんな状況に心あたりありませんか?という事で、早速以下のチエック項目をごらん下さい。
□去年、30代以下の若者と1分以上電話で話した記憶が無い。
□オフィスでさえもほとんど電話が鳴らず、街角でも携帯で話す人の姿をほぼ見かけない。
□会議や打ち合わせで全く質問が出なかったのに、後から個別で確認メールが何件も来る。
□業務連絡や依頼への承諾返事は即レスなのに、納期を過ぎても全く回答が来ない。
□メールは社外使用が多く、チャットツールが社内コミュニケーションのメインとなりつつある。
□時事ネタの存在は皆よく知っているのに、内容を聞くと実は誰も詳細を把握していない。
□TV番組の録画や動画配信を倍速で視聴する若者を見て驚いた事がある。
□ネットニュースのタイトルを見て想像した内容と、記事の結論が少なからず違っている。
□時代に遅れまいと「鬼滅の刃」を見てみたら、やたら登場人物の独白セリフが多いなと感じた。
□最近のヒットソングはイントロが無く、なぜかすぐに歌い始めるなと感じた事がある
さて、いくつ当てはまりましたか?
いずれにしても、これらの現象全てが、将来日本のリーダーを担う20代の若者間で起きている、コミュニケーション様式の変化に起因するものです。
我々ビジネスパーソンは、これまでの常識をあっさり投げ捨て、このZ世代のデファクトスタンダードを批判する代わりに、それを認識・理解し、形成する新コミュニティ世論に備ええなければなりません。

Z世代にとってはあたりまえ!?
「タイパ至上主義」という言葉をご存知でしょうか?
「タイパ」とは、タイムパフォーマンスの略称で、よく聞く「コスパ」=コスト・パフォーマンスの転用語です。
最近のZ世代が「タイムパフォーマンス(タイパ=時間対効果)」を異常に重視する価値観を定義しており、若者の特性を理解する上で重要なキーワードとなります。
簡単に言うと「早く、短く、簡単に!」です。
とにかく、彼らにとっては、時間をかけずに結果や結論を得る事が最優先であり、回り道や無駄な時間を割く事を異常に恐れます。
効率良く一定の答えを出す事が全てであり、余計な努力や選択を迷うくらいなら他者の価値観を平気で丸のみした方が得と考えます。
つまり、プロセスを無駄な時間としか捉えず、時間を消費したあげく失敗する事を「外す」と表現し、最も忌み嫌います。
周囲や仲間からの評価にも異常に敏感で「外さない」=イイね!を貰うための最安全策のみをとことん追求します。
何故そうなってしまったのでしょう?

インターネット普及とコミュニケーションの変化
原因としては、少子高齢化、ゆとり教育、日本経済の「失われた30年」の貧困による余裕欠落等いろいろありますが、主要因としては、インターネットがもたらした情報革命、特にその膨大な情報量と圧倒的な反応速度にあります。
様々なデータがありますが、米IT大手シスコ(Cisco)によると、世界のデータ流通量(IPトラフィック)は、本コラム読者の皆様が10から20代であったと思わしき1984年(そう貴方が電車やバスに乗って図書館に出向き、1日かけて卒論の資料をコピーしていた頃です)の毎月17ギガバイトから、2017年には1217億ギガバイト(=122エクサバイト、DVD304億枚相当)にまで増加したそうです。
つまり、単純比較すると33年間で、約70億倍ですね(驚)
流石に、日本におけるインターネットの普及は1995年ごろからなので、この比較はいくら何でもと思いますが、「情報流通量」という厳粛なファクトの側面からみると明白です。
別の側面から見た国内データとしては、総務省の試算があります。2020年国内のインターネット上のトラフィック(通信量)は、2004年比で約78倍まで急増しています。
この16年間でさえもこんなに情報通信量における環境に膨大な格差があるのです。
さらに、彼等は、子供の頃からLINEで育ち、情報源は全てスマホの中にあるネットニュース、動画、通信アプリのみ。
誰もが膨大なデータへ無料かつ秒でアクセス可能です。
コミュニケーションツールに関しても、メールなんてほぼ使ったこともなく、LINEにさえも飽きはじめたと思えば、多様なSNSのチャットツールを相手やコミュニティ毎に使い分けています。
そして、通信を開始してからその相手と繋がっている間は、とにかく数秒で返信する事が彼等の鉄の掟となっています。
これを守らないとコミュニティに入れてもらえません。
全て即レスという条件反射的なリアクションが日常の彼等からすれば「炬燵で年賀状のお返事を書いたのも今は昔、最近はメールのあけおめ新年挨拶で手抜きしてます!」なんて笑ってるような我々世代なんか、その反応スピードに数十倍の速度差とのトロさしか感じないのは当然でしょう。
つまり、莫大な情報やコンテンツ量の中から、最短の時間で自分にとってのベストな答えを選択する事=まさに「早く、短く、簡単に!」を幼少期から徹底的に仕込まれて来たのが彼等なのです。
だからこそ「タイパ」が全て!
以下のような行動特性は、ある面見事です。
変化する動画コンテンツの問題点

クロスマーケティング社の調査によると、20代の約半数が「ドラマ」「ニュース・報道」「バラエティ」の動画コンテンツを倍速視聴しています。
面白いのは、動画コンテンツを倍速で視聴することに対しての意見として、20代女性では「自分の好きな速度で見られるので、自由度が上がると思う(38.2%)」がトップ、60代男性では「テンポが速すぎて内容がよく理解できないと思う(36.4%)」がトップとなっています。
まさに速度感覚の格差が如実に真逆のコメントに出ていますね。
効率的に、短時間で刺激的かつスピーティーな展開こそが、タイパ重視の感性にマッチするものであり、短時間&加速動画のTikTokが10代20代の間で爆発的人気を誇ることからも明らかです。
こうなると、Z世代の日常の価値観も大きく変化していきます。
前述したように、彼等はすぐに正解や結論を求めます。
延々としたプロセスより、早く結末を知ることを求め、コンテンツ制作のセオリーであった「起・承・転・結」では遅すぎるということになります。
許容ラインは「起・転・結」くらいですが、最近、やたらと先に「結」を見せてから、「起」を追って行くドラマが増えたことにお気づきでしょうか?
行間を読むといったことや、余韻を楽しむこといったことは、もはや死語です(笑)
ドラマや楽曲に関しても、もったいぶったイントロ(導入部)は彼らにとって、とても待てるものではありません。
すぐに理解出来ないものは平気で無視するか、そのサイトから秒速で離脱します。
だから、省略の美学なんてもってのほかで、主人公が何故、何を考えたのかを丁寧に判りやすくちゃんと口頭で説明してくれないと、とても不快です。
最初にそのキャラクターには共感できないと感じると、もう二度と戻って来ません。だって、他にも山のようにお勧めのコンテンツが転がっていますから。。。
だから、我々が新卒の頃に上司から言われた「言わなくとも判るだろ」「背中をみて学べ」は、もはや彼等にとってパワハラにあたります(汗)
また、彼らは、通信アプリなど目で判読するテキスト情報が日常のコミュニケーションのほぼ全てなので、ノンバーバル(非言語)情報が混在するコンタクトが極めて苦手です。
まさに電話で話すなんて、苦痛以外の何物でもありません。
そして、極めつけは「好きなもの」しか選ばないということです。
サブスク音楽配信サービスでヒット曲をストリーミングで流し聴けば満足するので、お小遣いを貯めて、推しのアーティストのアルバムを買い、全曲楽しむ若者なんてもういないのです。
彼らは「外す」こと=「失敗」を異常に恐れるので、嗜好に合いそうなお勧めリストさえ手に入れば、新たなジャンルを試すなんて冒険は決して犯しません。
もはや、こうしたZ世代のコミュニケーション特性や性質をエイリアンやモンスターだと嘆いたり憂いても無駄です。
もう、古き良き昔のコミュニケーション文化はオワコンです。
今後、更に世代交代が加速し、彼らの新感覚が日本のメインストリームとなるのはもう間もなくです!(そうなる頃には、皆さんこそがモンスターですね)

「そんな世の中に誰がした!?」
実際のところ、犯人は、私たち世代が始めたデジタルマーケティングです。
インターネットをはじめとする、デジタル技術の進化による相互作用のニューメディアが、新たに莫大な利益を生み出しました。
これまで不可能だった、顧客一人一人の嗜好やニーズに個別にあわせる究極の「One to Oneマーケティング」
素早い応答で相手の反応を引き出し、何も考えずにアクションを実行させる魔法の技術。。
しかし、その経済的利益優先の副作用として、今とんでもない分断が世界中で起きています。
その闇とは何か?
次回は「14.5文字の新メディアが造りあげる、炎上とフェイクニュース」と題して、Z世代が何故好きなものしか選ばなくなったのか?その真相と深刻な問題について考察してみようと思います。
お楽しみに!
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