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  • 執筆者の写真fixers-inc

14.5文字の新メディアが造りあげる「炎上」と「フェイクニュース」

更新日:2023年11月3日


危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション メディア 炎上 フェイクニュース

昨年の4月13日に、日本最大級のインターネットニュース配信サービス「Yahoo!ニュース」トピックスの見出しの文字数が最大14.5文字に変更となりました。


“全国8万人超感染 重症1千人超”
“露 全面侵攻必要兵力の7割集結”


これらの最大文字数は、2001年以来ずっと13.5文字だったため、その一文字増加の変更は、何と!20年ぶりとなる画期的なものでした。


その理由について、ヤフー社の公表プレスリリースをそのまま引用します。


実は、これは、フェイクニュース対策だったようです。


たかが一文字、されど一文字…


その違いは相当大きいと思います!


何故なら、今やスマホでしかニュースを見ないタイパ至上主義の若者世代は、ほとんどがこの見出ししか見ないからです。(過去のコラムはこちら


ニュースの本文を読まずに、この14.5文字のみでニュースを判断・評価しています。


すぐに理解出来ないものは無視して離脱する彼らの特性により、ほとんどのニュースは、本文の内容が読まれないまま、この見出しだけで認識・把握されているのです。


嘘だと思うなら周囲に聞いてみてください!


時事ネタの存在自体はよく知っているのに、その内容を聞くと実は誰も詳細を把握していないといった現象に、すぐ気づかれる事でしょう。


最も厄介なのは、本文を読まないままにこの短い見出しをコピペして、それに対して自分の意見や主張をSNS上にどんどん投稿していくことです。


それがリツイートされ、数千・数万単位でまたたくまに社会へ拡散されていきます。


最近、耳目を集める事件やトラブルを巡り、全く無関係の方が根拠無い誹謗中傷やデマ情報を拡散され、人違いなのに攻撃される誤爆炎上被害が相次いでいます。




 


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「炎上」は「社会問題」へ


最近、誰もが知っていて日常的に使用されるワードの一つに「炎上」があります。


この「炎上」を改めて定義すると、”特定の人物や団体・組織が行った行動・行為や発言・発信した内容について、主にソーシャルメディアを中心に批判的なコメントが殺到する現象”のことです。


2007年頃にスマホやSNS、動画視聴サービスが産声を上げ、その陰で「炎上」という負の社会現象が出現し始めました。


その後、新語・流行語大賞にもノミネートされ、初めて社会に認知されると、一時、企業CMの中に、職業・性別・文化・国籍・人種・民族・宗教・ハンディキャップ・年齢・婚姻状況・性的志向などの観点において、差別・偏見的な表現やメッセージが含まれていた場合にネット上でバッシングが起き、視聴者からのクレーム多発によって、謝罪&放映中止となる事例が相次ぎました。


CMの中止で済めばまだマシなほうで「大炎上」するとプロモーション活動全般、さらには、製品販売そのものまで中止となる事も決して稀ではありませんでした。


近年「炎上」は、もはやネット世界の特殊用語を越えて、社会現象や社会問題として定着したと言っても過言ではありません。


その特徴としては、とにかくSNSを通じた圧倒的な反応の早さと広範囲な伝播力にあります。


10年前、我々のような危機管理のプロフェッショナルが戦う相手は主に新聞記者であり、事件・事故の発生後に取材を受けてコメントやプレスリリースを作成するまでのタイムスパンとして、朝刊掲載までの数日単位の準備時間でマネジメントをしていました。


ところが、ここ最近のリスク対応は、SNSでの「炎上」の有無をリアルタイムでモニタリングし、その反応を注視しながら常時ネットメディアへの波及を警戒しなければなりません。


そして、遂にそのネット掲載記事が、大きな社会・時事問題の認定イコールとなるYahooニュースのトップに上げられた瞬間から、今度は数時間単位で全メディアへの対応策を打っていく緊急体制を敷くことが当り前となっています。


つまり、最新のクライシス対応の現場では、企業発信のコメント案やプレスリリースを数時間以内に完成できるスピードと即断可能な経験値を持つ危機管理コンサルタントしか生き残れない、厳しいタイパ至上環境に変化しています。


もはやPR会社系の広報コンサルタント等への発注~納期待ちといった時間感覚では、とても務まりません(笑)


炎上波及のスピードは恐ろしく短時間、且つあっという間で、火種となるネットの書き込みからYahooニュースのトップ掲載という炎上のピークまで、最短で数時間~半日程度で進展する事もあり得ます。


これが事実であればまだしも、まさかの「フェイクニュース」であった場合、その恐ろしさは想像を絶するものがあります。


 


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◆海外のCASE


海外の事例を見てみましょう。


皆様、約1年前にアメリカで起きた連邦議会議事堂襲撃事件を覚えていらっしゃいますでしょうか?


昨年1月6日、バイデン氏の大統領選勝利を認定する審議が行われていた議事堂を、トランプ氏の支持者が襲撃し、死者まで出たあの事件です。


米国での人種差別や分断を進めたとされるトランプ前大統領が引き起こした究極の炎上事例のみならず、民主主義を根底から震撼させた歴史的事件として深い傷跡を残しました。


この事件を契機に、Twitter社は、トランプ大統領がTwitterでこの暴動を扇動したとの理由でそのアカウントの永久凍結を行いましたが、驚くべきははそのアカウントフォローワ―数でした。(なんと、昨年1月8日の凍結時点でトランプ大統領のフォロワー数は8,877万人。)


発行部数世界一の新聞としてギネスブックにも認定されている読売新聞でさえ公称約735万部ですから、その12倍もの人間にトランプ氏の「フェイクニュースだ!」という生声が一日に数回以上ダイレクトにデリバリーされていた事になります。


まさにその伝播力は大量破壊情報兵器級といっても過言ではありません。


古今、新聞やテレビ等のマスメディアが世論に与える影響力の大きさから、世界中の国家が法令や権力でその脅威を制限する一定の規制を設けており、一度クーデターが起きると真っ先に軍が占拠する対象であることはご存知ですよね?


今、仮に米国で軍事クーデターが起きたとしたら、最初に制圧すべきはきっとFacebook本社となる事でしょう。


歴史を振り返って想像してみてください!


ヒトラー、毛沢東、レーニンといった絶対権力者がスマホを持っていたと仮定して、彼らがマスメディアの数十倍となる、億単位の世界中の民衆にSNSを通じて「炎上」ネタや「フェイクニュース」の直接情報発信が可能であったとしたら?


きっと歴史は大きく変わっていた事でしよう。。。(怖)


 


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◆国内のCASE


たかが「炎上」くらいで、暴動からクーデターまで大げさな!と思われる方も、つい最近国内で起きた衝撃的な沖縄警察署襲撃事件はご存知でしょうか?




本日時点では、この襲撃の発端となった高校生の失明事故と警察官の関与などの真相は不明ですが、一定の事実はありそうな様相です。


しかし、ここで指摘したいのは、その真偽ではなく"SNSの伝播力のスピードと影響力のパワー"です。


高校生が眼球破裂の大けがをおったとされる事故が発生したのは1月27日午前1時15分ごろでした。


それが警察官の暴行によるものとしてインスタグラムの「ストーリー」機能やツイッターなどのSNSで瞬く間に拡散され、若者ら300人以上が沖縄署を取り巻き、石や棒、爆竹、生卵などで警察官を襲撃したのが、27日午後11時ごろから翌28日午前4時すぎにかけてでした。


事件発端から暴動まで、たった1日さえ必要としていません。


当然ながら現地の新聞・TVなどは、この襲撃事件そのものを報道するまで、高校生の眼球破裂事件については1行1文字たりとも報じていません。


暴動の発端となった高校生の受傷自体をマスメディアが一切報道していない段階で300人もの若者が暴徒化したのです。


もはや、若者にとっての事実認識と行動原理において、マスメディアの第三者評価は意味を持っていないのです。


デマや風評、もしかしたら「フェイクニュース」ではないのか?という評価はSNSでの拡散情報のみで判定されたのです。


ネット検索で手軽に得られる断片的な情報=「フェイクニュース」か否かを見極める主体的な判断力や決断力の乏しさが、彼らの大きな弱点となって、早くも悪い予言となって当たってしまったということになります。。。(過去コラムはこちら



 

既に日本でも、こうした「炎上」をきっかけとする300人規模の暴動事件が起き得たことに大きな脅威を感じませんか?(ちなみに前述の米国議会襲撃の容疑者は約800人程度でしたが、一番の違いは銃器か爆竹かですね)


しかし、この「フェイクニュース」に振り回されるのは、何も若者だけと限りません。


もう一つ例をあげると、2020年3月、新型コロナウイルスへの恐怖が初めて日本全国を覆い始めた時、日本全国のスーパー、ドラッグストアの棚からトイレットペーパーが姿を消しました。



これは「トイレットペーパーの製造元が中国でコロナの影響で品薄になる」という旨の、全く事実とは異なるデマ情報のSNSへの投稿が拡散した事によるものです。


これが口コミで風評となってパニックを引き起こし、日本中の老若男女がこぞって買いだめに走った結果、トイレットペーパーが本当に品薄となり、ドラッグストアの前に連日大行列が出来ました。


まさに「フェイク」から生まれた「誠」です。


こうしたSNSと「炎上」や「フェイクニュース」の問題は、世界中で日々顕在化し、SNSを運営する巨大プラットフォーマーを規制すべきだという世論と大きな非難の圧力が巻き起こりました。


世界中の当局による規制強化に危機感を覚えた運営企業側も、遅ればせながら何らかの歯止めをかけようと自主規制に動き始めています。


昨年12月、フェイスブックが、スマートフォンの画像共有アプリ最大手の「インスタグラム」で、青少年への悪影響から保護を強化するために保護者が利用時間を制限できる機能の追加をついに発表したり、昨年10月19日には、ヤフー株式会社が、国内最大閲覧数を誇るニュースプラットフォーム「Yahoo!ニュース」の記事単位でのコメント欄を自動的に非表示とする機能を導入すると発表しています。


誰でも匿名で他人への怒りを吐き出せるネット空間の闇が炎上を生み出し、SNS時代のゆがんだ正義感が「フェイクニュース」として拡散され、言動が暴走する事は、もはや現代の新たな脅威です。


こうした自主規制を含めて、何らかの対策が必要となっている事は明らかです。


 


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これからは15.5文字に!


内容を見ずに、SNSを通じて「見出し」というラベルのみでレッテルを張り、その評価を確定してしまう――。


そして、それが恐るべき世論形成にまで行きついた時に、国家的規模の社会問題が派生します。


まさに、その典型的パターンがコロナ対策の切り札において発生しました。


信じられないかも知れませんが、米国でも日本でも、新型コロナワクチンは「世界的な人口削減計画の一環」「超微細マイクロチップが仕込まれている」というような突拍子もない噂話から「ワクチンを打つと不妊になる」という、まことしやかなデマを本気で信じている人が驚くべき規模数で存在しています。


特に不妊症のデマは、20代の若者の間で未だに都市伝説のように強く根付いています。


ちょうど本コラムを執筆途中の1月27日にヤフー社より新たな発表があったので、締めくくりとして最後に付け加えておきます。



20年ぶりの昨年4月の1文字追加から一年を待たずして、更にもう一文字追加です!


彼らの独自調査の結果では、記事内容を正確に理解できる見出しという点については、15文字以上の評価がより高いからと出ているそうです。


たかが2文字!されど2文字!


この「炎上」と「フェイクニュース」という社会問題への対策がいかに重要で緊迫しているか。


Yahoo!ニュースの矢継早な対策が、まさにそれを証明していますね!




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