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Z世代は何故好きなものしか選ばなくなったのか?その真相に迫る

更新日:2023年11月3日





危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション Z世代

前回の「若者進化論~Z世代を迎え入れる企業が知っておくべきポイント~」が、思いのほか大好評で、もう少し掘り下げて欲しいとのリクエストを数多くいただきました。(ありがとうございます)


なので、予定を変更して「インターネットをはじめとするデジタル技術進化の問題点」について考察したいと思います。


 

危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション

奇妙なクレーム


ここ数年、危機管理トップコンサルタントとしてクライシス案件の陣頭指揮を執る際に、これまでに無かった不思議な事象がたびたび起こるようになりました。


例えば、大規模なリコール問題など、数多くの消費者の方に被害を及ぼす可能性が少しでもある場合、当然企業は当該事実を公表し、注意喚起を行うと同時に、販売中止や製品回収を行います。


事態の発覚後、我々もただちに対応策と準備作業を重ね、ようやく報道発表や謹告・HP開示などの情報開示とリコール体制のスタートに漕ぎつけます。


その上で、実際の被害派生のリスクレベルが高いとなると、当然の自粛措置として、企業広告・TVCMやキャンペーンなどの宣伝・販促活動を速やかに中止し、反省と危機対応専念の姿勢を提示するべきと進言します。


普段TVをご覧になっていて、唐突に「盲導犬への理解を求める」といった内容のACジャパンの広告作品が流れ始めたら、それはどこかの企業が不祥事で自社CMを急遽、公共CMへと差替えたものとご理解ください。


きっと、直近の新聞報道をご覧頂ければ「はいはい、この会社ね!」と心当たることでしょう。


さて、これでマスメディアの広告・TVCMはしっかり止めましたので、いよいよ事案公表と同時に真摯で丁寧な個別対応をスタートします。


当然ながらセンシティブなケアが必要となるからこそ、莫大なコストをかけて顧客対応専用の緊急コールセンターを開設しています。


そんな折、外注先コールセンターのスーパーバイザーから奇妙なクレームが数多くエスカレーションされてきます。


同じタイミングで自社ホームページの問合せフォームにもハードクレームの書き込みの嵐。


どの内容も一様に「こんな問題起こしておいて、ちゃっかり広告・宣伝をしつこく続けてるなんて、どういう了見だ!」と激しく怒っておられます。


あれ?確かマスメディアはとっくに止めたはずでしたが。。。


 

原因は、オンライン上のアレだった!


危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション インターネット広告

ピンときた方はもうお気づきかもしれませんが、犯人はインターネット広告(ターゲティング広告)だったのです。


ターゲティング広告とは、ネットユーザーの属性やWebサイトの閲覧履歴など、特定のニーズを持つユーザーを識別・自動判定し、条件を満たした人にだけ、オンデマンドで繰り返し広告を掲載する「One to Oneマーケティング」の手法の一つです。


この手法の恐ろしさは、ユーザーが一度も自社サイトにアクセスしなくてもターゲティングができるという点です!


皆様のブラウザの閲覧履歴や検索履歴、位置情報、購買履歴、さらには、想定される性別や年齢などのビックデータがAIで解析・グルーピングされ、効率的な顧客獲得や購買につなげたい企業の製品やサービス属性にマッチする対象ターゲットとして提供されます。


つまり、マスメディアのような万人向けではなく、皆様の嗜好をピンポイントで狙ってマッチングした広告のみを、瞬時に洩れなくコンバージョンするまで繰り返し表示させる事が可能な魔法のデジタル技術です。


 


一旦話を戻して、実際にクライシスの現場で何が起こっていたのかをご説明させていただきます。


危機管理の最重要ターゲットである、対象顧客からのクレームの嵐の理由はもうお判りですね!?


製品問題を真剣に心配される消費者は、本件に最も関心が高いからこそ、少しでも情報を得ようとネットを駆使して検索を繰り返し、複数サイトを閲覧します。


この行動様式こそが、当該企業の関連製品やブランドに特定の関心やニーズを持つユーザーであるとAIに識別され、ピンポイントで対象顧客に対し、企業ブランド広告等が繰り返し繰り返し送られていた訳です。


そら、怒りますよね。。。(苦笑)


故に、残念ながらその企業の危機管理は、ダメージから始まる事となります。


この危機管理の事例をご紹介したのは、本来求められていない情報を最も見せたくない方に送ってしまった悲劇のエピソードの為ではありません。


これまでマスメディアでは不可能だった、顧客一人一人の嗜好やニーズに個別にあわせる究極の「One to Oneマーケティング」であるターゲテイング広告の仕組みと問題点をより顕在化するためです。


このデジタル技術の主戦場は、もちろん危機管理ではなく、皆様の日常生活の方です。


普段気に止めてなくとも、何か久しぶりに温泉に行こうかなと調べ始めただけなのに、


  • 何故か、やたらと旅行情報のメルマガや旅館の広告を目にするな・・・

  • ネットで一度購入しただけなのに、特定の記念日前になるとネットメディアを閲覧する度にやたらと関連商品のブランド広告を目にするな・・・

  • 誰かに思考や嗜好を読まれて見張られているみたいで怖いな・・・


これらは、決して気のせいではありません。


そして、その誰かとは、最近よく聞くGAFA(Google, Apple, Facebook 、Amazonの略)を代表する世界的な巨大プラットフォーマー達です。


彼らはポータルサイトや検索エンジン、SNSやアプリなどの最先端で高品質なサービスをタダで提供する代わりに、皆様の最新の個人データを絶えず収集し続けます。


そして、その膨大な個人情報は集約された後に、彼らの持つ世界最高峰のAIを通じて分析され、広告の販売をはじめとする、彼らのビジネスに使用され、同時に数多くの外部企業にもビックデータとして販売され共有されていきます。


 

危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション GAFA

ついに日本株全体の時価総額を抜き去ったGAFA!


2021年7月、GAFA4社の時価総額合計(770兆円)は、ついに日本株全体の時価総額を抜き去りました。※GAFA、時価総額で日本株超え 安定収益が資金呼ぶ: 日本経済新聞 (nikkei.com)


日本のトップ企業であるトヨタの時価総額が1月18日に初めて40兆円を超えたとニュースになっており、一方で、1月3日にはアップルの時価総額が史上初めて3兆ドル(約340兆円)を突破しました。


どれほど彼らが巨大で、この新しいビジネスモデルによって莫大な利益を上げているかがお判りでしょう。


我々世代には「タダほど怖いものはない」との警戒心があるため、感覚的にデジタル技術と人工知能による「嗜好の押し売り」に恐怖を覚え、巨大プラットフォーマー達を規制すべきだという意見が、欧州を中心に盛りあがっています。遅ればせながら、日本の行政でも何らかの歯止めをかけようとする動きもあります。※デジタルプラットフォーマーにメスを入れた公正取引委員会、その成果と苦悩 巨大IT企業との暗闘5年(47NEWS) - Yahoo!ニュース


しかし、インターネットの申し子である若者世代はどうでしょうか?


Z世代にとっては、わからないことや、興味あることを、簡単に最速で調べられる巨大プラットフォームは便利以外の何ものでもありません。


なんせ「タダで魅力的なコンテンツ」が使いたい放題ですから!


しかも、更に莫大なコンテンツやデータの中で何が一番自分の好みに合うかも選んで、絶えずお勧めリストにして送ってくれるので、むしろ、自分の興味関心のある情報のみに接する機会が増え、興味がないコンテンツを目にする機会が減るので、彼らにとっては快適なインターネット環境が得られて大歓迎です。


前回、Z世代は余計な努力や選択を迷うくらいなら他者の価値観でも平気で丸のみした方が得と考えるとご説明しました。


つまり、自分たちで選んでいるようで、実は知らず知らずのうちにAIが集約し、グルーピングした仮想の多様性の中で、仲間と共感しやすい好きなもの=「外さない」価値観の選択を繰り返しているだけなのです。


 

危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション

「外さない」価値観ハマる代表サービス


リコメンド(お勧め)文化の具体的事例を3つ挙げてみましょう。


①グルメサイト「食べログ」


このサイトの評価点が飲食店の生死を分けます。


その評価基準のアルゴリズムが、不透明だとして数々のトラブルや訴訟が起きていますが、その影響力は絶大です。


0.1点の違いでも客足が大きく増減し、潰れた店もあるほどです。


20年3月に公正取引委員会が公表したグルメサイトの実態調査結果によると、飲食客の約83%が点数を参考に店選びをしているそうです。※グルメサイト、点数操作は独禁法違反 公取委が調査: 日本経済新聞 (nikkei.com)


皆さんも初めての店選びで「食べログ」評価3.2以下だと絶対ためらいますよね?



 

危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション 動画配信サービス NETFLIX

②「NETFLIX」


創業わずか15年で時価総額20兆円、動画視聴サービスの王者となったNETFLIXこそ「One to Oneマーケティング」の権化です。


消費者の嗜好にあったコンテンツを推奨するアルゴリズムとAIの開発に莫大な投資を行い、視聴者の満足度や傾向を瞬時に把握して次々と人気作品をリコメンドして来ます。Z世代としては、面白いコンテンツを探す労力無く、効率的にエンタメを視られるので、同じ嗜好性持つグループが増々集約され、一気に共感の輪がSNSでの好評価としてバズります。


一つの人気コンテンツが世界で数億回視聴される爆発的なヒット作が次々と生み出されるのはその為です。


更に、その機能は彼らのオリジナル作品の制作にも存分に生かされています。


なんせ、億単位の個々の視聴者がいつ何のドラマを選んだかはもちろん、内容のどの部分で離脱したか、何処で再生を止めたかまでリアルタイムで把握可能です。


昔から、ハリウッド映画の大作にはマーケティング重視の文化があり、試写会で数百人規模の観客にプレ視聴させ、その反応によって不人気な部分を編集でカットしたり、結末をABC3パターン撮影しておいて、一番反応が良いものを大手スタジオが選んで最終作品として完成させる事はよくありました。(だからこそ後年、それを不満とする監督が本作と別に自らの拘りを貫いた「デイレクターズ版」を再上映したり、DVDとして再販売したりしてますね!)


今の動画視聴サービス主流の時代は、その調査対象母数も世界中で億単位となっており、瞬時にオンラインで人工知能による「One to Oneマーケティング」が可能です。


外さない監督・スタッフ・スターキャストは勿論、作品テーマやシナリオまでも若者の嗜好にビッタリ合うようにイジリ放題です。


最近ようやく世帯視聴率から個人視聴率にシフトチエンジした日本のTV局の調査対象世帯数は、全国でもたったの約1万世帯に過ぎません。しかもわざわざアナログの測定機械を置いてもらっているなんて、、もはや勝てる訳もありません。



 

危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション マッチングアプリ

③「マッチングアプリ」


コロナ禍で人流・人数制限で、ますますリアルの出会いの場が消失し、婚活どころか恋人探しもままならないここ数年の日本の恋愛事情。


このままでは益々少子高齢化が加速し、日本のGDPはその分母の総労働人口減少という絶対事実から、最早、絶対減少が運命付けられています。


いろんな経済予測の当たり外れはありますが、この人口動態だけは唯一100%で、絶対外れない未来です。


何故なら、移民でも受け入れない限り、今から数十年間は出産可能人口が増えない事が確定しているからです。。。もう過去には戻れません。


さて、そんな中で爆発的に急成長しているのがマッチングアプリ市場です。


様々なデータがありますが、今や20歳~49歳の独身の男女の利用率は約78%を超えており、恋人探しの際に利用する場所として、コロナ後は「マッチングサービス・アプリ」が42.6%と、「職場や学校での出会い」29.4%、「友人や家族からの紹介」24.0%を遥かに引き離して断トツのトップになっています。※ 2021年マッチングサービス・アプリの利用実態調査 (mmdlabo.jp)


つまり、皆さんの周囲の若者世代は何のためらいもなく、「恋人や将来の伴侶」を職場や学校、友達の紹介などのリアルな出会いでなく、しがらみのないアプリ内のネット空間で一番多く見つけ出している訳です。


さらに、最近の実体験として驚くのは、それを一切周囲に隠そうとしないところです。


彼らにとって、ひと昔前のマッチングアプリへの抵抗感や裏技的恥ずかしさは皆無です。


最近のマッチングアプリは、自動的に異性への嗜好を読み取り、一番自分の好みに合うお相手を膨大な会員の中から、自動マッチング機能で順番にお勧めしてくれます。恋愛や結婚という人生最大の選択さえ、AIが選ぶスペック候補の中から選ばせる事で、高い成約率を売りにするマッチングアプリが大人気です!


むしろZ世代にとってのアプリでの恋人探しこそ、「早く、短く、簡単に!」=決して外さない高確率のお相手を選べる究極のタイパツールであり、それを活用している事は自慢なのかも知れません。






危機管理 広報 クライシスマネジメント コミュニケーション デジタルマーケティング

さて、ここまでインターネットとデジタル技術の進化による「One to Oneマーケティング」と人工知能を操る巨大プラットフォーマーが、いかにZ世代に深刻な影響を与えているかについてご説明してきました。


決して若者世代を非難する意図はありませんが、残念ながらZ世代が主体的に情報を探して取りに行く事が苦手なのは事実です。必死に真剣に時間をかけて、いろんな可能性を探し試すなんて罰でしかありません。


その結果、何を捨てて何を取るか?自己にとっての最善とは何か?など自分自身で見極める主体的な判断力や決断力の乏しさが彼らの大きな弱点となっています。


そして今、その弱点が原因となって、現代のネット炎上という闇を生み、まさに世界中で様々な分断を生み出し始めています。



次回は「14.5文字の新メディアが造りあげる、炎上とフェイクニュース」について考察していきます。


お楽しみに!









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